思い出の昭和、そして上月町
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(第58話)IC-70の実力

<<2007.12.29記>>
同級生のK君が親父さんに買ってもらったという東芝のトランジスターラジオ「IC-70」を見せてくれた中学2年のある日を忘れることが出来ない。(ちなみに、このラジオは1969年にすでに発売されていたようです。1969年グッドデザイン賞を受賞しています。\9,200だったそうです。)
その斬新なスタイルにほれてしまったのであります。
そしてそのネーミングは1970年前後という時代を反映していました。当時はまだまだ超ハイテクニカルなものであった「IC」というデバイス。そして1970年に開かれた万博を境に感じ始めた新しい時代をイメージさせてくれる「70」という数字・・・・
この巧みなネーミングとそのスタイルに惚れた私はそれが欲しくて欲しくて・・・・後日、親父にラジオをせがんで見ました。昭和46年(1971年)の冬のことです。
さて、ある日のこと、親父がラジオを買ってきてくれました。姫路のどうも質流れ品を扱っているような、またはその質屋でかとも思うのですが2BANDトランジスターラジオを買ってきてくれましたが・・・・僕が欲しいのはこんなんじゃない!!
そのラジオは日立の8石ラジオであり、2BANDと言ってもFM-AMではなく、SW-AM(つまり短波、中波)であったのです。がっくりです・・・・・、そりゃそうだ、当時の親父にFM付といってもピンとはこないでしょうね。
私のたっての要求により悲しそうな顔(ようするに私の要求を理解できない状態?)をしながらもついに「IC-70」というラジオを買ってきてくれたのです。
先に述べたK君の持っているもののマイナーチェンジ版のようなものでした。微妙にデザインは違ってはいましたが、基本的な部分はすっかりそのままでした。
小型のラジオであったため、低音等はまったく期待できませんでしたが、その音質たるや息を呑むくらいの美しさでした。
OCL、OTLという回路構成が良かったのでしょうか、その透き通るような中音域は本当にブラボー!!でした。
再生帯域は小型ゆえに決して広くは無かったのにこの再生音の美しさ、高音質感を感じさせてくれるこのラジオには今でも忘れられない思い出、逸話があります。
昔々、その1971年当時のことですが、NHK-FMの放送パターンとして、東京のキーになるところが作った番組は19Cm/secのオープン・リール・テープで各ローカル放送局に配信されていたらしいです。
ところが東京からの生放送となると、当時の(マイクロ波)回線事情によりモノラルになってしまっていたのです。もちろん、地元にあたる東京地域ではステレオで放送されていたでしょうが、その他のローカル局(例えば私が住む地域では神戸)ではモノラルでの放送となっていました。
ある日のこと、地元神戸からのステレオ放送を聴いていたのですが、たしか19時を過ぎてから東京からのモノラルライブ放送に切り替わりました。
その放送から流れてきたクラシック(曲名も何もすっかり忘れてしまいましたが・・・)の音質の良さにびっくりしたとともに、なんとたった6Cm(たぶん)という小口径で、しかも単なるトランジスターラジオ用と思われるこのスピーカーであるにもかかわらず、その「音質の違い」、というものをちゃんと表現できた(それを聞き分けた私の耳も良い?)その音質にほれ込みました。すごい!!すごいよ東芝「IC-70」
しかし、低周波アンプでのこのOTL、OCLの回路構成のせいでしょうか、ひとつだけ難点がありました。
それは電池の電圧が下がると、突然歪の量が半端では無くなってしまう・・・という事象が現れてくることです。
すでに当時にはいろいろなハイスペックなラジオ(例えばナショナルからはワールド・ボーイ)が登場していましたが、私はこの「IC-70」というラジオを今でも忘れることが出来ません。
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