思い出の昭和、そして上月町
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(第15話)迷信が生きていた頃

私は一度、死にかけたことがあります。中学一年生の秋のこと、荷物部屋になっていた中二階を自分の部屋に改造すべくひとりで片付けました。で、昔の重い机を一人で階段を滑らしながら持ってあげて自分の城が完成しました。しかもです、第5話に書いたカラーテレビが来たとき、もう捨てるしかないくらいに傷んでいたそれまでの白黒テレビを貰い受けることに成功して、当時としては超贅沢な子供部屋が完成しました。
そんな冬のある日、私は風邪をひいてしまい自分の城で休んでいました。土曜日の夜のことです。私は「キーハンター」を白黒テレビで見ながら横になっていました。
そこへ、看護婦の資格をもつ母親が「この注射を打ったらすぐ治る」といって、既に悪い予感を感じ取っていた私は恐る恐るその母親の注射を受け入れました。
さあ、それからが大変です。みんなが寝静まった夜の11時ごろ、突然の寒気に驚きました。さらにだんだんと体の震えが激しくなっていきます。寒気に耐え切れず、電気コタツを抱えても震えがとまりません。
その悪寒と震えがやっと止まったと思ったら、こんどは猛烈な発熱です。枕もとの体温計で計ってみるとなんと39度を完全にオーバーしています。中学一年生とは言え、さすがに尋常な状況ではないことくらいは感じ始めていました。とりあえず無茶苦茶にのどが渇いたので、水を飲みに階下へおりました。
で、すでに尋常ではない状況の体で動いたものですから、階段での足音の異常にやっと家族も気が付いてくれました。
さて、寝床にもどった私はまた検温してみました。とっくに40度を超えておりました。と同時に今度は鼻血です。なかなかとまりません。そのときの親父の言葉がすごい。
「止まらん鼻血は、後頭部の毛を一本抜いちゃったら止まる」などというのです。そんなことを言う前に医者に連れて行ってくれ・・てなもんです。
果たして鼻血は止まったか?否、そんなものでは止まるはず無いですよね?
しかも熱はまだまだドンドン高くなっていきます。最終41.8度というとんでもない発熱です。
と同時に意識が朦朧とし始めました。自分の足と足があたるだけでもめちゃくちゃ熱いのです。
子供の私は「あーこのまま僕は死ぬんやなあ・・・、まあ、ええけどな・・・・」と思いはじめました。
忘れもしません、あの時は。本当にこのまま死んでいくのかと思いましたモン。「なんや、死ぬのも怖くないなあ・・」などと飛んでも無いことを思い始めていたそのとき、突然に熱が下がり始めました。ドンドンと下がっていきます。そのときに母親は桃の缶詰を開けてくれました。その桃の缶詰のおいしかったこと、おいしかったこと。あんなにおいしい桃缶を食べたのは後にも先にもそのときの桃缶です。
子供ながらに生還した!!と思いました。
落ち着いてからやっと近くの医院に連れて行ってもらいましたが、突然の異常な発熱の原因は分からなかったようでした。
それにつけても、あの生きるか死ぬかの思いをしている私にとって「鼻血は後頭部の毛を一本抜けば止まる」の一言は強烈でした。
<<2005.08.15記>>
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